お散歩マップ
部屋の“パートナー”になる絵を探して
京橋ギャラリーめぐり
2015.10.2
骨董の専門店が多く立ち並び、美術愛好家が集まる場所として知られて来た京橋。最近は現代アートを扱うギャラリーも増えてきています。
地図を頼りに歩いてみれば、うっかり通り過ぎてしまいそうな路地にも、じつは素敵なアート作品を飾る空間がたくさん!
ぽっかりと時間が空いた日は、京橋でギャラリーをめぐる小さな旅に出かけてみませんか?
小さなギャラリーをひとりで訪れるのは、誰でもちょっと勇気がいるもの。そこでまず、銀座に事務所を構え、この界隈のギャラリー事情にも詳しいアートソムリエの山本冬彦さんにアドバイスを伺うことに。「ギャラリーは敷居が高いと思われがちですが、別に買うつもりがなくても、ふらりと訪れていい場所。また、無名の新人作家であれば2、3万円前後で手の届く作品も多い。部屋に飾る絵を探すのでもいいし、純粋にアートを見る目を養うのにもおすすめですよ」(山本さん)
以前は、山本さん自身、絵はあくまで「観るもの」というイメージが強かったそう。京橋にある会社で働きながら、コレクターとして活動してきた山本さんが絵を集め始めたのは、会社の近くの画廊で一枚の若手作家の日本画を買ったのがきっかけだったとか。「20代の終わりにマンションを買ったときに、家に飾る絵が一枚欲しくなって……『どうせなら本物を』と思ったんです。実際に家に飾ってみたら、絵の存在感で部屋の雰囲気ががらりと変わった。『アートが身近にあるって、こんなにいいものなんだな』と思ったんですね」(山本さん)。
会社をリタイアした今は、ほぼ毎日のようにどこかのギャラリーに通っているという山本さん。ビギナーにもおすすめのギャラリーに連れていってもらうことにしました。
アートソムリエ 山本冬彦さん
保険会社などで会社員をしながら、コレクターとしての30年以上活動を続けている。これまで集めた絵画は幅広いジャンルにまたがり、1,800点以上。現在は「アートソムリエ」として一般の人に画廊まわりやアートを買う楽しみを広める活動をしている。「アート作品を買う楽しみを、多くの人に身近に感じてもらいたい」との願いから、コレクターの会を作ったり、若手作家支援のためのグループ展などを企画したりしている。
はじめに連れ立って足を運んだのは、京橋仲通りのビル2階にある四季彩舎です。迎えてくれたのは、オーナー二代目の石井信さん。個展を中心に年間8〜9回の企画展を開催しているそう。「ほとんどの方は常連さんですが、アートのビギナーにこそ気軽に来てほしいですね」(石井さん)。
その日に展示されていたのは、羊を主人公とした絵本の原画。小さな絵の中に森や月や街が、幻想的なタッチで描かれています。じっと眺めていると、別の世界にひきこまれていくよう……。「扱う作家は、創業者である父親と同じ世代の50〜60代に加えて、僕と同じ30代の若手作家が多いですね」(石井さん)。おそるおそる値段を聞いてみたら、手頃なものだと3万円程度とのこと。「ちょっと背伸びすれば、私にも買えるんだ……」。驚きとうれしさが入り混じり、絵を見る目が変わってきました。
四季彩舎
【住所】 | 東京都中央区京橋2-11-9 |
【TEL】 | 03-3535-2131 |
【営業時間】 | 11:00〜18:30 |
【定休日】 | 日曜 |
【URL】 | http://www.shikisaisha.com |
京橋駅のあたりを通り過ぎて次に訪れたのは、1962年、父親が新宿で創業した老舗画廊の二代目が京橋で開業し20年以上の歴史があるギャラリー椿。天井が高く奥行きがあるギャラリー内には、アート展示のチラシやポストカードがおかれ、まるで小さな美術館のよう! その日はいろんなポーズをした女性をモチーフとした絵画が並んでいました。これぞ現代アートという雰囲気で、ひとつひとつの作品に強い存在感があります。
「アートはやっぱり好きな人が限られているので、一般の方が足を運ぶきっかけになるように、オークションやミニコンサートなどのイベントも時々やっています」と話すのは、スタッフの諸田美里さん。無料で入るのが申し訳ないくらいですが、「もちろんアートに興味があれば誰でも歓迎ですよ!」とのこと。スタッフの方がみんな気さくで話しやすいのもうれしいところ。「今度はひとりで来てみようかな」と思いました。
ギャラリー椿
【住所】 | 東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル 1F |
【TEL】 | 03-3281-7808 |
【営業時間】 | 11:00〜18:30 |
【定休日】 | 日曜 |
【URL】 | http://www.gallery-tsubaki.net/tsubaki.html |
お次は中央通りを渡り、高速道路沿いにある「京橋竹河岸通り」へ。こんなところにギャラリーが? と思いますが「じつはこの通りにいいギャラリーが集まっているんです」と、アートソムリエの山本さん。通りの真ん中に位置するビルの2階にあるのが、アートスペース羅針盤。ぬくもりのある木のテーブルと椅子があるせいか、居心地のいいカフェのような雰囲気です。
代表の岡崎こゆさんが「このモチーフには作家の思い入れがあって…」とていねいに説明をしてくれました。しかも、この日は作家さんもいらっしゃいました。絵の作者に直接会えるなんて、美術館ではまずありえないこと。運がよければ自分の感動を本人に伝えられるのも、ギャラリーならではです!
アートスペース羅針盤
【住所】 | 東京都中央区京橋 3-5-3 京栄ビル2F |
【TEL】 | 03-3538-0160 |
【営業時間】 | 11:00〜18:30 |
【定休日】 | 日曜 |
【URL】 | http://www.rashin.net |
最後に足を運んだのは、地下にある現代作家を多く扱うギャラリー。階段を下りていく瞬間は“秘密の空間”に入り込むようで、ワクワクします。「地下だとちょっと入りにくいんですよね(笑)。ですから、わざと入り口には扉をつけずにオープンにしているんです」と語るのは、GALLERY b.TOKYOの小林勝さん。ジャンルは絵画を中心に版画や彫刻などを扱っており、とくに新進の若手作家を多く取り上げているそう。
この日は、大学院を卒業したばかりという若手作家の作品が展示されていました。その日の曇り空とはうって変わって、明るい日差しを感じるような色づかい。作品の美しさに目を奪われます。「一見ほかの絵よりは目立たないけど、この絵は何か好き!」「作家はどんな気持ちで描いたんだろう?」。絵と向かい合っていると、いろんな気持ちがわき起こってきました。
GALLERY b.TOKYO
【住所】 | 東京都中央区京橋3-5-4 吉井ビルB1F |
【TEL】 | 03-5524-1071 |
【営業時間】 | 11:00〜19:00(最終日〜17:00) |
【定休日】 | 日曜 |
【URL】 | http://www.gallery-b-tokyo.com |
小1時間ほど歩いただけで、驚くほど満たされた気持ちに……。これがアートの力なのでしょうか?
ギャラリーめぐりをしてわかったのは、「家に持って帰るとしたらどれだろう?」と思うと、絵に向き合う姿勢も自然に真剣になるということ。「絵を見る目を養うには、肩書きや値段を見ずに、まず作品そのものに向き合ってほしい。20~30代であれば、同世代の作家の絵を買うのがおすすめですね。無名の時に購入した作家が、何年か後にどのように成長するのかを見届けたり、絵と一緒に年月を重ねる楽しみがあります」
ショッピングやグルメでこのエリアを訪れるのもいいけれど、ギャラリーめぐりでは、また違った充実感があります!
京橋界隈のギャラリーで自分の部屋の“パートナー”を探しに、ぶらりと訪れてみては?