インタビュー
京橋を“子どもたちに誇れる街”へ
清水建設株式会社 建築事業本部 東京支店 統括所長:萩谷眞佐夫
2015.12.16
京橋と会社の“お付き合い”は100年以上。
故郷・京橋での新時代が幕開け
清水建設の創業は江戸時代、1804年にさかのぼります。越中富山の大工であった初代・清水喜助が、江戸神田鍛冶町で創業し、のちに「清水組」の屋号で店を構えました。1838年には、江戸城西の丸の造営に参加したという記録も残っています。京橋との縁がスタートしたのは創業100年にあたる1903年、明治36年のことです。現在の本社がある「東京京橋区南鞘町」という場所に本店を新築したことに始まります。当時から、銀行や洋館、学校などをはじめとした、先進的な建築を請け負い、日本における近代建築をリードしてまいりました。
京橋とは100年以上前からの“お付き合い”になりますから、中央区の中心地ともいえる京橋、日本橋、八重洲地区には、清水建設のお得意様・元施工建物が数多くあります。このエリアだけでも、現在200以上の建物に、私どもが関わらせていただいています。
1991年からは、本社が港区浜松町シーバンスに移転いたしましたが、3年前の2012年、当社の故郷といえる京橋の地に、本社が戻ってまいりました。港区のウォーターフロントの良さももちろん理解していますが、やはり東京の玄関口である京橋は、ビジネスの面でも極めて利便性が高いエリアだということを、あらためて実感しています。京橋に再び戻ってこれたことは、個人的にもとてもうれしく、光栄なことだと思っています。
美味と美酒の思い出深き「モルチェ」
私が入社したのは40年ほど前になります。当時の本社ビルは既にありませんが、クラシカルで重厚な雰囲気があり、思い出深い建物ですね。町の風景も、現在とはまったく違うものでした。2〜3階建ての小さな建物がほとんどだったと思います。地元古老のお話を聞くと、かつては夏になると路地に縁台を出して夕涼みをしたり、という景色も残っていたということです。今でも通りを一本入ると、以前の町並みが一部残っており、住民の方が京橋の伝統を守っていらっしゃるのが垣間見えるのではないでしょうか。
京橋は老舗のレストランなど名店ぞろいのエリアですから、仕事帰りの思い出も数多くありますね。
明治屋ビルの地下にあった「モルチェ」は、特に思い出深いお店です。お店の雰囲気も良く、支配人さんやお店の方が大変気持ちよく接してくれるので、ランチや会社帰りにもよく利用していましたね。有名なハンバーグをはじめ、お料理もリーズナブルでしたし、明治屋で取り扱いのある素晴らしい銘柄のお酒も楽しめることもあり、会社やOBの集まりにも最適でした。再開発でできる来年のリニューアルオープンも非常に楽しみです。
ほかにも、洋食レストラン「サカキ」、焼き鳥の「栄一」「伊勢廣」、中国湖南料理の「雪園」、うどんすきの「美々卯」、アジフライの「松輪」など、数えたらきりがないほど。今後再開発が進む中で、新たな特色のある飲食店ができることも、ぜひ期待したいですね。
東京マラソンで感じた「京橋の力」
8年ほど前になりますが、2007年の第1回東京マラソンにチャレンジしたことがあります。あいにくの寒空ではありましたが、10kmコースを楽しく走らせてもらったんです。コースには中央通りが含まれており、京橋明治屋前には水分や食べ物を補給できる施設が設けられていました。数十年間親しんできた京橋、そして中央通りを、多くの参加者の皆さんが楽しく走っている姿を見て、大変感激したことを覚えています。この街が持つ、人を高揚させるパワーのようなものを感じたのかもしれません。
5年後には東京オリンピックが控えていますが、中央通りが往路・復路ともにコースになると聞いています。世界に向けて、京橋が発信されることを楽しみにしています。
この明治屋はもとより、京橋には世界に誇る施設も数多く集まっています。かつて日活本社があった場所には、日本映画の保存・啓蒙に力を尽くしている東京国立近代美術館フィルムセンターがありますし、骨董通りにはさまざまなギャラリーが軒を連ね、街歩きには絶好のスポットです。
このような文化施設は、海外の主要都市においても、街の顔として極めて重要な役割を担っています。現在は再開発で閉館していますが、素晴らしい収蔵品を誇るブリヂストン美術館も、リニューアルが非常に楽しみな施設です。
伝統の息づく街と一体となって歩んでいきたい
2012年に本社を京橋に移したことをきっかけに、エリアとの関わりも深まっています。代表的なのは、なんといっても日枝神社の祭礼でしょう。
各町内の神輿を、地元住民の皆さまと企業が一体となり、皆で担いで盛り上がります。清水建設も氏子総代として参加させていただいており、所属する町会で新調したおそろいの企業半纏を着て、地元のみなさまと一緒になってお祭りを盛り上げています。社内では、すでに来年の祭礼の準備がスタートしているんですよ。社員にとっても大変貴重な経験をさせていただいていますし、京橋を愛する心を育てる重要な役割だと考えています。
そのほかにも、中央通り、八重洲通りを中心とした店舗・企業が加盟する「東京中央大通会」での春・秋の年2回イベント、秋に中央通りで行われる「日本橋・京橋まつり」などのイベントにも積極的に参加しています。
また、中央大通りの環境美化活動をしているNPO法人「はな街道」のメンバーとして発足時から参加し、季節の花植えや清掃作業に協力したり、箱根駅伝の際には、沿道の交通整理ボランティア活動を社内有志で行うなどの活動も継続しています。さらに2004年3月にスタートした東京駅の東側日本橋・八重洲・京橋地区を周回する無料循環バス「メトロリンク日本橋」への協賛を行っており、来街者への利便性向上と地域連携がより図られるよう支援しています。京橋で働く人間として、地域の皆さまとともに京橋の発展に貢献していきたいですね。
中央通りのランドマークを作りたい
現在、明治屋ビルが属する京橋二丁目西地区の再開発が進んでいます。私たちは、「中央通りに歴史的なシンボル、ランドマークを作りたい」という志を持って、取り組んでおります。
3.11の震災以後、我が国ではそれまで以上に安心・安全な街づくりが進展してきました。今後この京橋も、再開発が進行する中でより近代的な町並みに生まれ変わっていくことになりますが、ハード面はもちろんのこと、新しい就業者たちが京橋に誇りと愛着を持ち、地域の結束力・連帯力を高めるような新たな“絆づくり”、すなわちソフト面の重要性が増していくのではないかと考えています。
我々清水建設の「子どもたちに誇れる仕事を。」という理念でも謳っておりますとおり、そのような視点で、人と人をつなぐ街づくりをしていくことが、長い歴史を引き継ぎ、新しい歴史を作っていく街に必要なのだと思います。
京橋は東京の玄関口です。世界都市東京のシンボルロードである「中央通りの中核エリア」として、魅力ある街に成長してほしいと願っています。
PROFILE
- 清水建設株式会社 建築事業本部 東京支店 統括所長:萩谷眞佐夫
- 2000年、京橋地区を含むエリアを重点的に対応するプロジェクトチームが発足し、リーダーに就任。2005年には中央営業所を開設。所長に就任し、京橋エリアでのプロジェクトを率いる。
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